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目次

30ヶ月は肥育だけの期間ではなく、出生からの月齢

黒毛和牛の飼養に時間がかかる理由

肥育期間を延ばすとコストと牛舎利用期間も増える

26ヶ月出荷の研究は品質とコストを同時に検証する

期間と肉質は単純な比例関係ではない

短期肥育と環境負荷の関係は「生産量当たり」で見る

「長期肥育」に全国共通の法的定義はない

おがわ牛が大切にする、生後30ヶ月までの時間



おがわ牛では、自社で肥育する牛を生後30ヶ月まで育てています。生まれてから出荷まで、およそ2年半。


その間には、母牛のそばで過ごす仔牛の時期があり、哺乳や離乳を経て体をつくる時期があり、肉牛として仕上げていく肥育の時間があります。


黒毛和牛では30ヶ月前後での出荷が一つの目安とされていますが、「30ヶ月」という数字が法律で決められているわけではありません。


一方で現在は、飼料費や環境負荷なども考えながら、26〜27ヶ月程度での出荷を目指す短期肥育の研究も進んでいます。


では、なぜ黒毛和牛はこれほど長い時間をかけて育てられるのでしょうか。肥育期間と肉質、コストとの関係を見ながら考えていきます。



30ヶ月は肥育だけの期間ではなく、出生からの月齢

「30ヶ月肥育」という言葉を見ると、「30ヶ月間ずっと肥育している」と思うかもしれません。でも、ここで示される30ヶ月は、出生から出荷までの月齢を指している場合があります。


農林水産省が2016年に公表した消費者向け資料では、一般的な例として、繁殖農家が仔牛を8〜10ヶ月齢まで育て、その後、肥育農家が約20ヶ月飼養する流れが紹介されています。単純に合わせると、生まれてから出荷まではおおむね28〜30ヶ月。


つまり、牛の一生の中には「仔牛として育つ時間」と「肉牛として肥育される時間」の両方があります。


ブランド牛などの説明で「30ヶ月」という数字を見るときは、それが肥育期間そのものなのか、出生から数えた出荷月齢なのかを確認すると、意味をより正確に理解できます。



黒毛和牛の飼養に時間がかかる理由

生まれたばかりの仔牛は、すぐに肥育用の飼料をたくさん食べられるわけではありません。母乳や人工哺育の時期を経て、離乳し、骨格や消化器を育てながら、少しずつ成長していきます。


牛舎で育つ耳標を付けた黒毛和牛の仔牛

その後の肥育期では、牛の健康を保ちながら体重を増やし、出荷時の枝肉重量や筋肉、脂肪交雑などを整えていきます。


黒毛和種では、枝肉重量と脂肪交雑の両方が取引価格に関わるため、「できるだけ早く大きくすればいい」というものでもありません。


血統、性別、飼料の設計、体重の増え方、牛舎環境、健康状態などによって、その牛に合った出荷時期は変わります。


月齢は大切な目安の一つ。でも、それだけで牛の仕上がりが決まるわけではありません。



肥育期間を延ばすとコストと牛舎利用期間も増える

牛を長く育てるということは、その分だけ毎日の管理も続いていくということです。


出荷を1ヶ月延ばせば、その間も飼料や敷料が必要になり、牛舎の管理や衛生管理、人の手も欠かせません。牛舎の一つの区画を使う期間も長くなるため、次の牛を受け入れるタイミングにも影響します。


また、牛を導入してから販売するまでの期間が長くなれば、飼料価格や枝肉相場などが変動するリスクにさらされる時間も長くなります。


一方で、単純に出荷を早めれば収益が上がるというわけでもありません。十分な枝肉重量に届かなかったり、目標とする肉質まで仕上がらなかったりすれば、飼料費を抑えた分以上に販売面で影響が出ることもあります。


肥育期間を考えるときは、


  • 一日当たりの増体

  • 飼料効率

  • 枝肉成績

  • 販売価格

  • 牛舎の利用期間


などを合わせて見る必要があります。


「長い方がいい」「短い方がいい」と、期間だけで決められる話ではないんですね。



26ヶ月出荷の研究は品質とコストを同時に検証する

黒毛和牛の出荷を早める研究も進んでいます。熊本県農業研究センターでは、黒毛和種去勢牛9頭を用い、通常29ヶ月齢で仕上げる体系を26ヶ月齢に短縮する試験を行っています。


その試験では、


平均出荷月齢:26.2ヶ月

平均出荷体重:803kg

平均枝肉重量:489.8kg

平均BMS:9.6

平均肉質等級:4.7


という結果が示されました。


また、29ヶ月齢まで飼う標準的な試算と比べると、飼料設計によって一頭当たりの飼料費が10,099〜82,473円低くなる結果も示されています。


ただし、試験に使われたのは9頭。血統や性別、飼料、目標とする体重、地域の相場などが違えば、同じ結果になるとは限りません。


この研究も「26ヶ月で出荷すれば必ず同じ品質になる」と証明したものではなく、条件を整えながら、品質とコストの両立ができる可能性を検討したものです。



期間と肉質は単純な比例関係ではない

「長く育てるほど肉質が良くなる」と考えたくなるかもしれません。でも、肥育期間と肉質は、単純な比例関係ではありません。


牛の成長速度は、ずっと同じではありません。肥育後期になると、飼料を食べた量に対して体重が増える効率が下がることもあります。


反対に、早く出荷しようとしても、飼料設計や増体の状態が合っていなければ、目標とする枝肉重量や肉質に届かないこともあります。


肥育期間について考えるときは、出荷月齢だけを見るのではなく、


  • 試験頭数

  • 性別

  • 血統

  • 肥育開始月齢

  • 飼料

  • 枝肉重量

  • BMS

  • その他の肉質項目


なども一緒に見る必要があります。


研究によって条件が違うため、「長期肥育なら必ず高品質」「短期肥育なら味が落ちる」と単純に決めることはできません。



短期肥育と環境負荷の関係は「生産量当たり」で見る

肥育期間は、環境負荷とも関係しています。飼養期間を短くすれば、一頭当たりで見ると、飼料を与える日数や排せつ物を管理する期間、牛舎で水やエネルギーを使う期間を短くできる可能性があります。


ただし、環境負荷も「何ヶ月飼ったか」だけで決まるわけではありません。


農林水産省が進めている畜産物の環境負荷低減の「見える化」では、牛肉について、頭数、月齢、飼料、排せつ物の処理方法、エネルギー使用量などの生産情報を基に、「枝肉1kg当たり」の温室効果ガス排出量を算定する考え方が使われています。


つまり、一頭を飼養した期間だけではなく、その期間にどれだけの枝肉を生産できたかも合わせて見るということです。


飼養期間が短くなって一頭当たりの投入量が減っても、枝肉重量などの生産量が変われば、「枝肉1kg当たり」で見た結果は同じとは限りません。


短期肥育だから必ず環境負荷が小さい、と単純に考えるのではなく、同じ単位で比べることが大切です。



「長期肥育」に全国共通の法的定義はない

「長期肥育」という言葉も、よく使われる表現です。ただ、日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格や長崎和牛の規約には、「何ヶ月以上なら長期肥育」という全国共通の区分はありません。


黒毛和牛を必ず30ヶ月で出荷しなければならないという決まりもありません。


「長期肥育」という言葉が使われている場合は、それぞれの生産者やブランドが、どれくらいの期間を指しているのかを確認する必要があります。



おがわ牛が大切にする、生後30ヶ月までの時間

肥育方法や出荷月齢には、さまざまな考え方があります。


その中で、おがわ牛では、自社で肥育する牛を生後30ヶ月まで育てています。30ヶ月という数字だけを見ると、単に「長く育てている」という話に見えるかもしれません。でも、その約2年半は、毎日の小さな判断の積み重ねです。


牛舎でおがわ牛の飼養管理を行う作業風景

おがわ牛では、生後17〜26ヶ月頃になると、牛の体調だけでなく、その日の天候や気温まで見ながら、餌の量を一頭ずつ調整しています。仕上げの時期に入っても、月齢だけを見て一律に出荷するのではなく、一頭一頭の仕上がりを確認しながら出荷のタイミングを見極めます。


長く育てるほど、餌も、人の手も、牛舎を使う時間も必要になります。


だから、おがわ牛にとっての「30ヶ月」は、それだけで美味しさを保証する魔法の数字ではありません。その時間の中で毎日牛を見て、食べ方や体調の変化に合わせながら育てることまで含めて、おがわ牛の30ヶ月です。


仔牛が生まれてから出荷されるまでの実際の流れは「誕生から出荷まで」で。



餌や水、育つ環境へのこだわりは「こだわりの育て方」でご紹介しています。



2026年9月10日

黒毛和牛はなぜ約30ヶ月育てる?肥育期間と肉質・コストの関係

黒毛和牛はなぜ約30ヶ月育てる?肥育期間と肉質・コストの関係
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